2010.06.17 Thursday
三人のユダヤ人
二十世紀というのは、三人のユダヤ人によって決定された。それは、カール・マルクスとジーグムント・フロイトとアインシュタインの三人である。そしてこれは、私の思うところ、キリスト教の最後のあがきである。
話を簡単にしてしまうと、マルクスは”旧約”である。だから、王国を作りたがってウロウロするのである。
フロイトは”新約”である。十九世紀のマルクスが旧約で下部構造なら、二十世紀のフロイトは、その人間の内部であり、それ故に、精神分析は”旧約”を超えて”新約”の世界宗教となったのである。
ホラ見ろ、宗教じゃねェか、というのは勿論、ここまでは単なる例えである。というのは勿論、宗教というのは神がかりで”奇蹟”を伴うからである。奇蹟のない宗教は宗教ではない。ただの哲学である。
という訳で、ここにアインシュタインが出て来る。
物理という学問は、なんだかよく分からないことに関する、明解なるメカニズムの研究である筈である。この”筈である”は”私の直観”である。
という訳で、マルクスとフロイトにアインシュタインが加われば、キリスト教という”宗教”の全貌が分かる筈なのである。という訳で私はアインシュタインが分かりたいのである。
(橋本治「相対性理論はなぜ難しいのか」『デビッド100コラム』冬樹社)